運送業許可証の取得方法を10ステップで解説|要件・費用・期間まで完全ガイド

- 運送業許可は資金・人・資格・場所・車両の5要件をすべて満たす必要がある。
- 取引先の荷物を運賃をもらって運ぶなら一般貨物自動車運送事業許可が必要になる。
- 自社の荷物を運ぶ場合や軽自動車(軽トラ)で運ぶ場合は一般貨物の許可は不要。
- 申請から営業開始までは、書類作成から数えるとおおむね4〜5か月が目安。
- 役員法令試験は2回まで受験でき、不合格でも再チャンスがある。
運送業許可証とは?取得が必要なケースと不要なケース

運送業許可証とは、他人の荷物を運賃をもらって運ぶ事業を国が認めた証明書のことです。
正式には「一般貨物自動車運送事業許可」と呼ばれます。これがないまま緑ナンバーの仕事を始めると、貨物自動車運送事業法に違反します。
私が現場でいちばん多く見るのは、「うちは自社の荷物だけだから要らないと思っていた」という勘違いです。線引きを最初に押さえておくと、無駄な手続きも、逆に無許可営業のリスクも避けられます。
運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)の基礎知識
許可の対象は「他人」の「荷物」を「運賃」をもらって運ぶ行為です。この3つが揃うと許可が必要になります。
管轄は営業所を置く都道府県の地方運輸支局。申請を受けて地方運輸局が審査します。
許可証そのものは1枚の紙です。事業者名・営業所の所在地・許可番号・許可年月日が記載され、許可書交付式で手渡されます。額に入れて営業所に掲げている会社も多いですね。
個人事業でも許可は取れるのか
個人事業主でも運送業許可は取れます。
法人格は要件ではありません。実際、私が手がけた申請でも、ひとり親方からスタートして法人化したケースは珍しくない。
ただし要件は法人と同じです。資金も車両5台も人員も、個人だからといって緩和されません。役員法令試験は、個人の場合は事業主本人が受けます。
許可が必要になる5つのケース
運賃をもらって他人の荷物を運ぶなら、次の5つのケースはすべて許可が必要です。
| ケース | 具体例 | 許可の要否 |
|---|---|---|
| 取引先の荷物を運ぶ | 契約先の商品を有償で配送する | 必要 |
| グループ会社の荷物を運ぶ | 別法人である親会社・子会社の荷物を有償で運ぶ | 必要 |
| 引っ越し業をおこなう | 個人宅の家財を有償で運搬する | 必要 |
| 積載車で自動車を運ぶ | 販売した車をキャリアカーで有償運搬する | 必要 |
| 霊柩車でご遺体を運ぶ | 葬儀に伴いご遺体を有償搬送する | 必要 |
許可が不要な4つのケース
逆に、次の4つは一般貨物の許可がいりません。
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 自社の荷物を運ぶ | 他人の荷物ではないため事業に当たらない |
| 運賃をもらわずに運ぶ | 対価としての運賃が発生しないため |
| 軽自動車(軽トラ)で運ぶ | 貨物軽自動車運送事業の届出で足りる |
| 自動二輪車(バイク)で運ぶ | 貨物軽自動車運送事業の届出で足りる |
建設業者が自社の資材を現場へ運ぶのは、典型的な「許可不要」です。あくまで自社の荷物だから。
ただ、「運賃をもらわなければ大丈夫」という理屈には但し書きが付きます。商品代金に運送費を含めて請求していれば、実質的に運賃を受け取っていると見なされることがある。形式だけで判断しないほうがいい、というのが私の正直な感覚です。
運送業許可の3つの種類と許可証の見本
貨物自動車運送事業は、一般貨物・特定貨物・貨物軽自動車の3種類に分かれます。

自分の事業がどれに当たるかで、必要な手続きも難易度もまったく変わります。順に見ていきましょう。
一般貨物自動車運送事業(トラック運送業)
不特定多数の荷主から荷物を預かり、有償で運ぶのが一般貨物自動車運送事業です。世間で「運送業」と言えばこれを指します。
トラック5台以上が必要で、要件も最も重い。緑ナンバーの取得もこの許可とセットです。この記事で解説する取得方法は、基本的にこの一般貨物を前提にしています。
特定貨物自動車運送事業
特定貨物自動車運送事業は、特定の単一の荷主の荷物だけを運ぶ事業です。
たとえば「A社の荷物しか運ばない」と決まっている専属契約のような形態。荷主が1社に限定される点が一般貨物との違いです。
正直に言うと、相談を受けても私は慎重に確認します。「将来ほかの荷主も増やしたい」という方には、最初から一般貨物を勧めることが多い。特定で取ると荷主を増やせないので、結局取り直しになるからです。
貨物軽自動車運送事業と緑ナンバー・白ナンバーの違い
軽自動車やバイクで荷物を運ぶなら、許可ではなく「貨物軽自動車運送事業の届出」で始められます。
届出なので、5台のトラックも資金要件もいりません。軽貨物の配送ドライバーがこれにあたります。
| 項目 | 緑ナンバー(事業用) | 白ナンバー(自家用) |
|---|---|---|
| 用途 | 他人の荷物を有償で運ぶ | 自社の荷物や自家用 |
| 必要な手続き | 一般貨物は許可、軽貨物は届出 | 手続き不要 |
| 運行管理・点呼の義務 | あり | 原則なし |
運送業許可取得の5つの要件(条件)を満たすチェックポイント
運送業許可の要件は、資金・人・資格・場所・車両の5つで、このすべてを同時に満たす必要があります。

どれか1つでも欠けると不許可です。私の経験上、つまずくのは圧倒的に「資金」と「場所」。順に押さえます。
資金の要件と自己資金・残高証明のタイミング
資金要件は、事業開始に必要な資金を申請者が確保していることを、預金残高証明書で証明します。
必要額は、人件費・燃料費・車両費・施設費などを国が定める基準で算定したもので、事業規模により変わります。具体的な計算式は地方運輸支局の手引きで確認してください。
ここで一番怖いのが残高証明のタイミングです。証明は申請時と審査途中の2回求められ、2回とも基準額を下回ってはいけない。
人・資格の要件(運行管理者・整備管理者の確保)
人の要件は、運行管理者と整備管理者を選任できることです。
運行管理者は運行管理者試験の合格者などが、整備管理者は実務経験2年と所定の研修修了などで就けます。ドライバーも車両数に応じた人数が必要です。
運行管理者は早めに確保しておくのが正解。試験は年2回程度で、思い立ってすぐ取れる資格ではありません。社内に有資格者がいないなら、求人や外部からの確保を申請準備と並行で進めてください。
場所の要件(営業所・車庫の物件選びの注意点)
場所の要件で最初に確認すべきは、その物件が市街化調整区域や農地でないかどうかです。
営業所・車庫が都市計画法や農地法に抵触すると、その時点でアウト。せっかく契約した物件が使えず、契約金が無駄になった例を何度も見ています。
車庫には前面道路の幅員証明や、営業所からの距離制限(多くの地域で直線10km以内など、運輸支局ごとに設定)もあります。物件を契約する前に、必ず運輸支局か行政書士に図面を見せて確認する。これは絶対です。
車両(トラック)の要件
車両の要件は、事業用トラックを最低5台確保することです。
自己所有でもリースでも構いません。使用権原を示せればよいので、リース契約書や売買契約書を整えます。
軽自動車は台数に含められません。ここで「軽トラを混ぜて5台」と考える方がいますが、それは不可。普通貨物の車両でそろえる必要があります。
【手順】申請から営業開始までの取得方法を10ステップで解説

運送業許可の取得は、書類作成から営業開始まで10のステップで進み、所要期間はおおむね4〜5か月です。
1ステップずつ、何をすればよいかと「ここまでできていれば正しい」という目安を添えて並べます。
所要時間・難易度・事前に揃える前提条件
難易度は、行政手続きの中では「やや高い」。書類が膨大で、要件判断に専門知識が要るためです。
事前に揃える前提条件は次の通りです。
- 営業所・車庫の物件(市街化調整区域・農地でないことを確認済み)。
- 事業用トラック5台分の使用権原(所有またはリース契約)。
- 運行管理者・整備管理者に就ける人材。
- 資金要件の基準額を満たす預金(残高証明が取れる状態)。
- 役員法令試験を受ける役員(個人事業は本人)。
ステップ1〜4:書類作成・申請・審査・役員法令試験
ステップ1:要件をクリアしたうえで申請書類を作成する。事業計画書、残高証明書、車両・物件の関係書類などをそろえます。目安は、5要件の証拠書類が一式そろったらOK。
ステップ2:営業所を管轄する地方運輸支局へ書類を提出する。受付印をもらえれば申請完了です。
ステップ3:地方運輸支局と地方運輸局で審査が行われる。ここは待ちの期間。書類に不備がなければ次へ進みます。
ステップ4:役員法令試験を受験し、ヒアリングを受ける。申請月の翌月以降に実施され、合格すれば大きな山を越えたことになります。
ステップ5〜7:補正対応・残高証明・社会保険手続き
ステップ5:審査で指摘された箇所を補正する。運輸支局からの連絡に追加書類や訂正で応じます。指摘ゼロで通ることはまずないと思っておいてください。
ステップ6:2度目の残高証明書を提出する。先ほど触れた通り、ここで基準額を割らないことが命です。
ステップ7:社会保険・労働保険に加入し、36協定書を労働基準監督署へ提出する。従業員を雇う前提が整います。
ステップ8〜10:許可取得・車体表示・選任届の提出
ステップ8:許可が下り、許可書交付式に出席して登録免許税を納付する。ここで許可証が手に入ります。
ステップ9:トラックに事業者名などの車体表示をし、営業所に看板を設置する。緑ナンバーへの切り替えもこの前後で進めます。
ステップ10:運行管理者選任届と整備管理者選任届を提出する。これで運送業を開始できる状態が整いました。
運送業許可取得にかかる費用の総額と期間シミュレーション
確実に言えるのは、許可取得そのものにかかる法定費用「登録免許税12万円」です。

これは一般貨物自動車運送事業の許可に対して国へ納める税で、地方運輸支局のものではなく法律で定められた額です。それ以外の車両費や賃料は会社の条件で大きく変わるため、私が実務で目安にしている内訳の考え方を示します。
登録免許税・車両費・営業所賃料など実費の内訳
確実な数値は登録免許税のみです。それ以外は物件や調達方法で変動するので、固定額として断定はしません。
| 項目 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 許可に対して国へ納める税(確定額) | 12万円 |
| 車両費 | トラック5台分(購入かリースで変動) | 物件・調達条件による |
| 営業所・車庫賃料 | 物件の地域・広さで変動 | 物件による |
| 人件費 | 運転者・運行管理者などの確保 | 事業規模による |
| 行政書士報酬 | 申請を依頼する場合の専門家費用 | 事務所により異なる |
車両費や賃料は、私が立ち会った案件でも会社ごとに桁が違いました。だから一律「総額○○万円」とは言いません。確実なのは登録免許税12万円、ここだけは動きません。
