運送業が赤字になる原因と対策|中小事業者が今すぐできる経営改善策

- トラック事業はここ20年ほど、赤字企業の割合が半数を超える状態が続いている。
- 運送原価は人件費41.4%、燃料油脂費16.3%の2つだけで約6割を占める。
- 赤字対策の出発点は、車両別・荷主別の原価計算で採算を見える化すること。
- 2024年問題でドライバーの時間外労働は年960時間が上限になり、走って稼ぎにくくなった。
- 国交省が2020年4月に告示した『標準的運賃』は、運賃交渉の根拠として使える国の制度。
運送業 赤字 原因 対策の結論

運送業の赤字は、原価割れ運賃・重い人件費・燃料高騰・資金繰りの遅れという複数の原因が重なって起きます。逆に言えば、原因を一つずつ特定して潰せば黒字化できます。
私は行政書士として緑ナンバー取得から車両追加まで数百件を手がけてきました。その中で見てきた赤字会社の共通点は、ほぼ例外なく『1台ごとの採算を見ていない』ことです。
国土交通省の資料でも、トラック事業は営業利益率の平均が0以下、赤字企業の割合が半数を超える状態が20年ほど続いていると明記されています。これは個社の努力不足というより、業界の構造問題です。
運送業の経営改善・赤字対策はどこに相談?財務支援やリスケに強い経営コンサルとは
赤字や資金繰りの悩みは、金融機関との交渉(リスケジュール)や財務に強い経営コンサルへの相談が現実的な選択肢になります。

正直に言うと、私のような運送業専門の行政書士は許認可が本業で、財務再生そのものは専門外です。だからこそ役割分担が大事だと思っています。
運送業向けに財務支援やリスケに対応するコンサルとしては、エクステンドのような専門サービスがあります。返済条件の見直しや資金繰り改善を含めた相談先として知られています。
ただし、相談に行く前に最低限やっておくべきことがあります。直近の試算表と、車両ごとの売上・経費をざっくりでいいので出しておくこと。手ぶらで相談しても、コンサル側も打つ手を出せません。
運送業の経営はなぜ厳しい?2つの業態と現状
運送業は『物を運ぶ貨物運送』と『人を運ぶ旅客運送』の2つに大きく分かれ、どちらも低収益に苦しんでいます。
貨物運送、つまりトラック運送業については、国交省資料が営業利益率の平均0以下・赤字企業半数超という厳しい数字を示しています。
この構造は今に始まったことではありません。日本トラック協会の経営改善ガイドブックは、参入事業者数の急増による運賃水準の軟化、燃料価格高騰、安全・環境対応の負担増を低収益の背景として挙げています。
私が現場で感じるのは、許可は取りやすいのに、取った後の経営が一番きついという矛盾です。参入のハードルが低いぶん、価格競争に巻き込まれやすい。
物流を支える運送業の現状はどうなっている?

物流を担うトラック運送業は、社会に不可欠でありながら、収益面では20年単位で苦しい状況が続いています。
前述の国交省資料が示すとおり、トラック事業は赤字企業の割合が半数を超える状態が長く続いています。荷物は減らないのに、利益が残らない構造です。
なぜか。コスト構造を見ると分かります。運送原価の内訳は、人件費41.4%、燃料油脂費16.3%、修繕費6.8%、車両の減価償却費6.7%。この4項目だけで約7割を占めます。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 人件費 | 41.4% |
| 燃料油脂費 | 16.3% |
| 修繕費 | 6.8% |
| 車両の減価償却費 | 6.7% |
人件費と燃料費という、どちらも会社が簡単には下げられない費目が上位を占める。ここに運送業の難しさが凝縮されています。
人を運ぶ旅客業が直面する課題とは?
人を運ぶ旅客運送業も、ドライバー不足と労働時間規制という、貨物と共通の課題に直面しています。

2024年問題によるドライバーの時間外労働の上限(年960時間)は、運転を仕事とする業態に共通して効いてきます。長時間労働に頼って売上を作る従来のやり方が通用しなくなりました。
正直なところ、旅客運送の細かい個別データは私の手元の一次資料では十分に確認できません。確かな数字が無いことを無理に書くより、ここでは『労働時間規制の影響は貨物・旅客に共通する』という事実にとどめておきます。
なぜ中小トラック運送業者は赤字に陥りやすい?
中小トラック運送業者が赤字に陥りやすい最大の理由は、原価計算をせず『原価割れ運賃』のまま走ってしまうからです。
私が見てきた赤字会社の多くは、運賃を『荷主に言われた金額』『昔からの相場』で決めていました。自社のコストを積み上げて『この仕事はいくらかかるか』を計算していない。これでは利益が出ているのか赤字なのか、走り終わるまで分かりません。
日本トラック協会のガイドブックが指摘するとおり、参入事業者の増加で運賃水準が軟化したことも背景にあります。値上げを言い出しにくい空気が、原価割れを固定化させてしまう。
参入事業者の増加で料金水準はどう下がった?

トラック運送業は参入事業者数の急増により運賃水準が軟化し、低収益の一因になっています。
これは日本トラック協会の経営改善ガイドブックが、低収益性の背景としてはっきり挙げている点です。事業者が増えれば、荷主は『安い会社』を選べるようになり、運賃は下がりやすくなります。
許認可の現場にいる立場から補足すると、緑ナンバーの取得自体は要件を満たせば可能です。参入が比較的しやすいぶん、過当競争になりやすい構造がある。これは制度の宿命のようなものだと感じます。
だからこそ、安売り競争から抜けるための武器が必要です。それが次に出てくる『標準的運賃』です。
燃料費の高騰はコストにどう響く?
燃料費の高騰は、同じ輸送量でもコストを直接押し上げるため、運送会社の赤字に即座に効いてきます。

先ほどの原価内訳のとおり、燃料油脂費は運送原価の16.3%を占めます。人件費に次ぐ第2の費目です。ここが上がれば、運賃が据え置きのままなら利益はそのまま削られます。
日本トラック協会の資料でも、燃料価格高騰は低収益性の背景として挙げられています。問題は、上がったコストを運賃に転嫁しづらいこと。
国交省は2024年3月、標準的運賃の見直しで燃料高騰分も適正に転嫁できるよう設定金額や算定方法を改めました。燃料サーチャージを含めた交渉の根拠として、これは使えます。
運送業の経営者を悩ます経営課題とは?
運送業経営者の悩みは、原価割れ運賃・人件費の重さ・燃料高騰・資金繰り・人手不足・2024年問題が複合的に絡む点にあります。
一つずつなら対処できても、これらが同時に来る。だから手が回らなくなります。整理のために、原因と対策を一覧にしておきます。
| 赤字の原因 | 主な対策 |
|---|---|
| 原価計算をせず原価割れ運賃で走る | 車両別・荷主別の原価計算で採算を見える化 |
| 人件費率が約40%超の重いコスト構造 | 稼働率改善と運賃転嫁の両輪で対応 |
| 燃料費高騰を運賃に転嫁できない | 標準的運賃を根拠に燃料分を交渉 |
| 入金サイトが長く資金が回らない | 入金サイト短縮・ファクタリングで資金繰り改善 |
| 事故・車両故障の突発的な大型支出 | 固定費見直しと予備資金の確保 |
| 2024年問題で売上減・固定費負担増 | 配車効率・帰り荷・荷待ち削減で稼働効率を上げる |
私の意見を言えば、最初に手をつけるべきは原価計算です。ここが固まらないと、運賃交渉も経費削減も『勘』になってしまうからです。
ドライバーの人手不足と高齢化はなぜ深刻なのか?

ドライバー不足が深刻なのは、人件費が原価の41.4%を占める一方で、人を確保しないと売上そのものが立たないという板挟みがあるからです。
運送業は労働集約型で、人件費比率が高い。これは国交省資料の解説でも示されています。人がいなければ車は動かず、人を増やせばコストが膨らむ。
2024年問題で時間外労働が年960時間に制限されたことも、ここに直撃します。一人あたりが走れる時間が減れば、同じ売上を作るのにより多くの人が要る。つまり人手不足がさらに深刻化します。
だから人件費を『減らす』発想だけでは詰みます。稼働率を上げて一人あたりの生産性を高め、その分をきちんと運賃に転嫁する。この両輪でないと採算は改善しません。
トラック運送業界の2024年問題とは何か?
2024年問題とは、2024年4月からドライバーの時間外労働が年960時間を上限に規制され、従来どおり走って稼ぐことが難しくなった一連の問題です。

何が起きるか。これまで長時間労働で売上を確保していた会社は、走行時間を増やせなくなり、売上が減りやすくなります。一方で車両費・保険・人件費といった固定費は変わらない。売上が減って固定費が残れば、赤字幅は広がります。
私が許認可の相談で社長さんに必ず伝えているのは、『労働時間が制約条件になった以上、限られた時間でいかに無駄なく走るか』が勝負になる、ということです。荷待ち時間の削減や帰り荷の確保が、以前より直接的に利益に効いてきます。
よくある質問
運送業の赤字対策について、相談現場でよく聞かれる質問をまとめました。
よくある質問
最後に一つだけ。赤字は『気合』では消えません。1台ごとの数字を出す。これをやった会社から、確実に流れが変わっていきます。まずは今期の試算表と車両一覧を、机の上に並べるところから始めてください。
